おしい

スカイ・クロラ見てきました。
感想を端的に述べるなら「キャスティングが全てを台無しにしている作品」という感じです。以下、ネタバレを極力回避しつつ細かい点について述べます。

 
まず映像は神。劇中で描かれる空中戦のどれもが、息を呑む臨場感を持った素晴らしい演出・映像美を見せてくれます。「金かけてCG多用すればこのくらい最近のゲームでもできるでしょ」という声もあるでしょうが、いくら道具としてのCGが発達したところで、その道具を用いていかに臨場感を出せるかというのはやはり最終的にはその道具を使う人間のセンスに大きく左右されるものでしょう。本作における空中戦での視点の取り方・切り替え等には、そう思わせるだけの素晴らしさがありました。

 
また音に関しても完成度が高いと思いました。川井憲次氏がいつもどおりの素晴らしい仕事をしていたのは勿論ですが、使用されているSE、特に戦闘機の発する様々な音(エンジン音・機銃音)が、空中戦において立体的に用いられることで前述の臨場感をより高める効果を生み出しています。映像ばかりに目が行きがちですが、音によって得られている演出効果はかなり多めだと思います。

 
で、問題の配役ですが、なぜ本業の声優を使わなかったのかと問い詰めたい気分です。確固たる理由があって声優を使わないというのは製作者の立場としてはアリだとは思うけど、今回の配役が本当に悩みぬいた末の解だったとは到底思えない。谷山・栗原はいい仕事をしていたと思いますが、主演2人については「客寄せ芸能人起用ですか」と思われても仕方が無いような出来。
具体的に言うと、例えば、冒頭の美しい映像から移り変わって物語の導入となる部分でのキャラどうしのやりとり。このシーンは後で明かされる物語の核心を踏まえると非常に重要な伏線となるシーンであり、見ている側に何か感じさせうる緊張感が必要になるところだと思うのですが、そこでのやりとりがもう本当に冗長な会話にしか聞こえなくて困る。特に直前までのシーンの映像美が衝撃的なほどに妥協の無い美しさを持っているだけに、見ている側としてはそれと対比する心理が働いて「あ、ここは流し見でいいや」と思わせかねない。物語のとっかかりからしてそんな調子なものだから、見ている側を人間ドラマへとうまく引き込めないままに後半までズルズルと進んでいき、核心がバラされても「あーそーなんだー」くらいにしか感情移入させることができずに終わってしまう。設定の独創性とそこから生まれる物語性には面白いものがあるのに、役者の演技でダメにされてるという印象を受けました。

 
確かにこれらの役というのは、既に声優として働いている若手声優には経験の少ないような役どころであって難しいのかもしれない。でも、俳優畑からピタリとくる最適解が見出せたのならまだしも、そうではなく模索が必要な状況であるなら、声優経験ゼロの俳優に四苦八苦させるのと、まがりなりにも声優業をやってきてる若手声優に四苦八苦させるのとでは、後者のほうが(成果物のクオリティ的にも、業界への貢献度という意味でも)ベターだと思うんだけどなあ。

 
まあそんなわけで、いろいろと残念な気分にさせられた映画でした。キャスティングがもっときちんとしていればDVDを買おうかという気持ちにもなれたんですけどね。いったい誰が得する芸能人起用なのかよくわかりません。