アイカツ!ねらわれた魔法のアイカツ!カード感想


今日は「アイカツ!ねらわれた魔法のアイカツ!カード」を見てきました。


アイカツ!ロスの気持ちを、日々のフォトカツで埋めている私ですが、現在開催されているゲーム内イベントのシナリオが、実は劇場版アイカツスターズ!のネタバレを含んでいるという話を聞き、しかしそのイベントは19日には終わってしまうというスケジュール。つまり、まず映画を見に行ってからシナリオ消化(ネタバレ回避)するためには、今この時期に映画を見に行かなければならなかったわけですが、ちょうど夏休みの時期でもあるため迂闊に劇場に足を運ぶと幼女先輩のお邪魔になってしまう懸念がありました。
そこで今日、盆明けの平日で、かつアイカツスターズの通常のTV放送のある日に、その放送時間帯に被る上映回を選んで見に行きました。幸か不幸か天候もやや荒れ模様で、目論見通り、わざわざこの回を見に来ている人は私以外には誰もいないというシチュエーション。つかミュージックアワードの時も似たような状況だったんですが、デジャヴ?まあ嵐の日に大スクリーン独り占めでアイカツ!を堪能できる喜びですよw


で、見た感想としては、アイカツ!は30分という尺の中にドタバタコメディ要素を詰め込んだ内容で、物語になにか深く踏み込むような展開はなく、純粋にお祭り映画として楽しむ内容のものでした。宣伝では、クライマックスにおける25人のアイドルのステージシーンがウリとしてピックアップされてましたが、これは実際に見るとホントに感動します。円盤はよ。


アイカツスターズ!のほうは、そもそもTVシリーズからしてストーリーのクオリティコントロールがガバガバで、正直あまり期待してなかったのですが、今回の映画に関しては、スターズの設定の中での物語の描き方としてまあ悪くない感じでしたね。よく頑張ったじゃん、と思いつつ、しかしクレジットを確認するとTVシリーズの監督とは別の人が監督をしてて「あっ(察し)」ってなる。
あと作画の不安定さが酷く目についたかな。特に割と大事なシーンの顔のドアップで作画が崩れてる印象を受けてしまって、そこの話に集中できませんでした。映画はTVとは違う大画面なので、なかなかそういうシーンでは誤魔化しがききにくいのが悪く出てしまい、絵作りが話の足を引っ張ってしまっているのはよくないですね。
監督が違う件といい、アイカツスターズはやっぱかなりカツカツな体制で無理して作ってんのかな〜と邪推してしまいます。


以下ネタバレあり。




ステージシーンについても「劇中の描写でS4が全員そろう初めてのステージシーン」てのがウリだったかと思うんですけど、カット割りがあまりよくない気がしました。もともとepisode Soloはテクノ系サウンドに乗せてロボットダンス的な振り付けが入っているのが特徴でしたけど、TVシリーズではひめ先輩がシーズンスプリングのロング丈のドレスで踊ってしまったこともあり「衣装とあってなくない?」みたいなツッコミがあって、どうもこの映画ではそれを意識したのかロボットダンス的な振りが認識しづらくなるような細切れなカット割りになってるんですよね。でも今回はS4の4人ともシーズンサマーの比較的短い丈のドレスだったから、むしろこのドレスならロボットダンスでも問題なくいけたんじゃないかな〜と。せわしなく切り替わるカットは視聴者にとってダンスの流れが把握しにくくなってノリにくくなる原因なので、こういうカット割りはあまり多用しないほうがいいんじゃないかと思います。
ただ、この問題はアニメ制作上の話だけでは済まない根深さがあるとも感じてて、そもそもアイカツシリーズはゲーム制作からして「まずブランドイメージありき」でドレス・楽曲・ダンス・キャラを作る方針だったはず。それが、ひめ先輩が躍ると似合っていないように見えてしまうとすれば、イメージの統一が(ゲーム制作の段階からして)うまく機能しなかった結果なんじゃないか、とも考えられるんですよね。なのでアニメ制作だけを問題視するのではなく、ゲーム制作でのミスがメディアミックス全体に波及している可能性もきちんと見ていかないといけません。
他方で、冒頭の「アイカツ☆ステップ!」や新曲「POPCORN DREAMING♪」のステージはよかったと思います。


ストーリーは、先述したとおり、スターズの枠組みの中ではかなりマシな部類だと思いますけど、やっぱりスターズは本質的にどうしても内輪の話・内向きの話になってしまうなあという印象。端的に言うと、ファンやパートナー企業がまるで存在しないかのように、ただただアイドルたちが私情のぶつけ合いや成績競争でもしてるかのような状況ね。四ツ星学園の中だけで話が閉じてしまい、その外に目を向けられてない、というような。たまにファンやパートナー企業の話が出ても、結局は私情のぶつけ合いや成績競争を転がしていくための都合のいい道具として使っているだけで、ファンやパートナー企業あってのアイドルでしょという大前提が決定的に欠けてる。
特に学園長がゆめちゃんの邪魔する展開はその典型で、今回の映画もまさにそれにあてはまる。学園長の一存でどのアイドルをどこにどう出演させるかが決められ、それによってゆめちゃんのチャンスが脅かされる、って話を描くとき、その解決編にあたってゆめちゃんの気持ちだとか努力だとか将来だとかに重点を置いてしまうと、「学園長はこうしたい」vs「ゆめちゃんはこうしたい」という、単なる2つの私情の対立構図にしかならないでしょ。そうではなくて、ファンがいったい何を望んでいるのか、ファンのために今できるベストは何なのか、という視点が導入されて初めてアイドルとしての大義名分を得て「ゆめちゃんはファンのためにそうしようとしているのだから正しい」という答えが導かれるんじゃないの?
今回の映画で言えば、学園長はゆめちゃんの邪魔をするためにローラちゃんと真昼ちゃんとでユニットを組ませようとして、そこにはファンへの配慮が無い(学園長の真意は伏せられているので、そのように見える)のに対し、解決編では「いろいろ難しく考えすぎてわからなくなってたけど、やっぱり私はゆめと歌いたい」「私もローラと歌いたい」つってヨリを戻すけど、結局それもファン不在じゃんっていうね。いちおう真昼ちゃんのセリフで「絆の強い者どうしの組んだユニットのほうがよいパフォーマンスをする」ということや、マオリのお婆ちゃん達のセリフで「アイドル当人が楽しむのを通じて見る者も楽しくなる」ということが仄めかされているけど、それこそゆめちゃんとローラちゃんが「互いに好き合っていることのみを根拠としてユニットを組む」のを正当化するための後付のご都合に見えちゃうんだよね。「いや、実際にローラと真昼のユニットで出てたら、それはそれで喜ぶファンは大勢いたんじゃないの?」みたいな見方に対して十分に反論できない。だから、単に「2人は互いに好き合ってるから」ではなくて、ファンの皆が、ケンカした2人を見て悲しむ声を挙げたり、2人いっしょにまたステージに立ってほしいと望む声が届いたりして、考え直す契機になるような展開を描くべきだったんじゃないのかな?
んで、それができないのは、結局スターズの設定の根本的な問題に起因するんだよね。つまり一年生メンツの皆が皆「憧れの人・地位のためにアイドルをやってる」ってこと。「ファンのため」じゃなく。だから、上述した展開で言うと「S4と同じステージに立ちたい」という動機が強すぎて、その動機に反するかもしれない行為を「ファンの皆のために」することができない。おそらくその展開を描いてしまうことは(もしかしたら今後のプロット上に予定されているかもしれないけど)物語の非常に大きな転機になりえて、最終的に「自分の意思で、S4になることを選ばない」というあたりに着地するのかもしれないけど、今はまだその時期じゃないから、結局のところファン不在の私情でキャッキャウフフ百合百合する展開に落とし込むしか、この映画をまとめることはできなかったのだろうなあ、という感じ。切ない。


さて、アイカツ!のほうはというと、ヒカリちゃん、ノエルちゃん、ユウちゃん、みなみちゃん、つばきちゃんあたりにまで出番があったのはホント嬉しいけど、彼女らには3Dモデルが無いからステージシーンには出られないんだな〜って。まあ、影も形もなかった花輪やよいちゃんに比べると扱いはマシなのかもしれないけど。悲しい。しかしステージに出た面々は、いつものアイドルカツドウ!の振り付けながら大集団ならではのパート分けアレンジがされていたうえ、間奏部分では関係性の近いキャラどうしでアピールを決めるとか、これもうファンにはたまらないですわ。繰り返しになるけど円盤はよw
作画クオリティもスターズと違って抜群だったな〜。笑う織姫学園長像(これは松谷さんの演技も凄かったけどw)とかティラノ君の地響きでよろけるあかりちゃんとかダンシングイナヅマボールとか、作画的にはもう見所しかない感じ。
お話的には、飛んで行ったカードを追いかける中で色んな撮影現場を荒らして回るような展開の後に、示し合わせたようにアイドルが集まり、クライマックスの殺陣からステージシーンまで繋がって、いやいや映画撮影ってのはどうなったの〜って思ってたら最後に涼川先生がカメラを回している、という、実はこのドタバタ全体が予定されていた脚本なの?と思わせつつもそこは断言せず、そういった撮影風景全体を我々リアルの観客が映画として見ている、という多重の入れ子構造になっていて、すごく巧いな〜と思いました。もちろん、そこまで深く考えずとも、ドタバタ自体がひとつのエンターテインメントとして成立していて、ベタに楽しんで見ることもできる、いい映画ですね。


まあ全体としては、(尺の長さとは裏腹に)アイカツ!が本編で、同時上映スターズな感じだったかな、と。次の映画はどうなるのかな〜?