出羽守

日本国内のエロゲ販売にすら難癖つけてくる外国人がいる件。


事の経緯としては、輸入再販業者がAmazonを利用して当該エロゲを日本国外への販売をしていたことについて、イギリスの国会議員が問題にしたことがあって、そこに人権団体とやらが首を突っ込んできたような感じ。現地の法令を考えずに売っていた輸入再販業者こそ叩くべきであって、なぜ日本国内の販売についてまで四の五の言われなきゃいけないんでしょうか。


犯罪行為を描写した架空表現を規制することの非合理については以前のエントリで何度も取り扱っていて、いまさらという感じではあります。改めて要点だけ並べとくと

  • 架空表現には被害者が実在しない。
  • 犯罪描写が犯罪の主要因になるとする説(強力効果論)は、長らく研究され続けていながら科学的に証明されていない。
  • 日本国内においては、未成年者の健全育成に影響があると懸念される表現物については、業界団体の自主規制や有害図書指定などの諸制度により、既に未成年者から隔離されている。
  • 日本国内においては、過激すぎる表現物はわいせつ物として刑法で取り締まられている。

といったところ。
ちなみにこの件については児童ポルノ法は立法目的上本来関係のないものです、ってこともまた言い飽きた感。同法は実在児童を性的搾取から守る(個人的法益の)ためのものであり、上記のとおり強力効果論が認められていない状況では、同法の条文に架空表現の条項を加えようと考えること自体がおかしいということになります。


ありがたくも当該団体の声明の翻訳をしてくださった方がいるようで、それによると「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」の一般勧告などという回りくどい根拠を出してエロゲを批難しています。挙げられてるのはおそらくこの資料(PDF)の11,12ページにある19号11,12のことだと思うけど、これは条約の第二条(f)および第五条、そして第十条(c)に向けられていて、そしてこれらの条文の前提となる「女性に対する差別」の定義は同第一条で以下のように定義されています。

「女子に対する差別」とは、性に基づく区別、排除又は制限であつて、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001.html

つまり、これを根拠にエロゲを規制すべしとの論を通すためには、エロゲが「(前略)を害し又は無効にする効果又は目的を有するもの」である、ということの証明が必要になります。槍玉にあがったゲームそのものについては知りませんが、エロゲは通常「このゲーム内容は実際にやったら犯罪行為になるから真似しないでね」等のdisclaimerが付記されていると思うので、そのような「目的」を持っているとは解せないでしょう。そしてまた、「害し」たり「無効にする」かどうかについては上記のごとく科学的な関連性は示されていない状況です。


そういうわけなので、日本国内のエロゲ販売について外国人に責められる謂れはありません。


にもかかわらず、なんで彼らがそこまで躍起になって潰しに来てるかとゆーと、彼らの倫理観、突き詰めていけばキリスト教的世界観において、そういう内容は想像するだけで悪であり、まして表現するなどということは断固として許しがたいって感情があるからなんでしょうね。そういった美徳の追求は自分たちのコミュニティの中だけでやってくれてるぶんにはいいですけど、それを他所の国にまで押し付けないと気が済まないんだとすると、「未開の蛮族どもを善導してやるぜ」つって征服・支配を広げ続けてた頃から何も進歩してないことになります。
別に日本人がエロゲ楽しんでいようが、あんたらには直接に害が及ぶわけじゃないじゃんなー。それこそ寛容が解たりえるケースだってのに。お互いに関わり合いにならなければ棲み分けできるのに、介入せずにはいられないのか。


それに加えて厄介なのは、前述の声明によると、

the Japanese government admitted that "the image of women in the media, who were often portrayed as objects either of sex or violence, had a great impact" on gender stereotypes.

http://www.equalitynow.org/english/actions/action_3301_en.html

であると言っている点。


ホンマかいな?と思って調べてみたら本当にありました。このページのJAPANのところの“CEDAW/C/SR.617”をクリックして転送されるPDFファイルの最後のページ、71のところにバッチリそのままのフレーズが書かれてますね。報告者はMs. Bandoってことになってますけど、おそらく当時の内閣府男女共同参画局長だった坂東眞理子氏でしょう。
つか上掲の文言も漠然としててどのような実態を指して言ってるのかが不明すぎるんですが、男女共同参画局が今回のような外圧を期待してそういう報告を行なったのだとしたら悪質ですね。日本国内における性差にまつわる格差が放置できない状況であることはわかりますが、それを是正するのに、日本とは全く異なる外国の価値観を、国内での議論をすっ飛ばしてそのまま持ってきて既成事実化してしまおうというような乱暴さを感じます。「欧米では〜」って言っとけばなびいちゃう有権者もまだまだ多いから、有効な戦術なんだろうけど、ヒドいわ。