流出≠公開


尖閣諸島沖の衝突のビデオが流出していろいろと盛り上がってるみたいだけど、官庁の内部の者が故意に流出させたのであれば統制能力に欠いているし、外部の者によって盗み出されたのなら防諜能力に欠いているということになるので、あまり喜ばしいことではないなあ。それも内閣がひとまずは非公開としたものが(その判断の是非は別として)、その判断に反して流出し、そのことを国民が好意的に祭り上げる風潮が蔓延するとすれば、五一五事件や二二六事件のような、シビリアンコントロールを外れた暴走の萌芽にもなりかねない。


これが内部者による流出だったとすれば、こういった事態を招いたことには、政権の中枢が政府内での信用を十分に得ていないということも原因の一端として考えられるでしょう。先だってビデオの一部が議員たちに限定公開されましたが、それを見た議員らの中で中国漁船の衝突の犯罪性を否定するかのような意見が少なからずあったことから、例えばそのことに納得できない内部者が憤って流出させた、というような可能性があります。
しかし、たとえ信用できない政権であっても、国民の手により民主的手続きでもって樹立したものなのだから、民主的手続きによらずにその政権を打倒しようとするのは誤りであって、そのような動きを国民が支持するのは無責任と言えます。政府のすることに文句があるなら、ロビイングなりデモなりといった、民主的な方法にこそ精力を注ぐべきでしょう。


他方で、流出したビデオの内容が真正であるなら、その内容に照らして、政府はなぜ漁船の船長を釈放したのかについての説明をする義務があります。このような事態になったからには、日中首脳会談実現のための事なかれ主義などではなく、きちんとした対応をしてもらいたいところです。