児ポ条例&検閲機関


京都府児童ポルノの単純所持について禁止する条例の検討を進めてるってんで話題になっていますが。
気になって京都府のウェブサイト見てみたけど、まだ11月開催ぶんまでしか議事要旨が公開されてなかったので、今のところ元記事の内容で判断するしかないっぽい。
少なくともこの記事に書かれてる内容がその通りだとするのならば、児童ポルノを取締る法令の検討内容としてはかなりまともな部類だと思います。要点だけ抜粋すると

  • 架空の人物が登場するアニメや漫画の規制は対象としない
  • 対象としたのは被写体の年齢が18歳未満で、性行為や性器に触れる行為などに及ぶもの
  • 単純所持や取得に即座に罰則を適用すると冤罪の恐れがあるとして慎重論があった一方、廃棄命令については意見集約につながった
  • 廃棄命令に従わない場合は罰則を科す
  • 13歳未満の児童ポルノの有償取得については廃棄命令なしでただちに罰則適用する

といったところ。児童ポルノ法に関して頻繁に指摘されている問題点についてきちんと配慮しているように思われます。この方向性で条文化され、以後の運用・改正においてもここで検討された論点をきちんと押さえてくれるのであれば、日本一まともな児童ポルノ取締り条例になるのではないでしょうか。
ただ気になるのは、13歳未満の児童ポルノの有償取得について「加害行為を助長し、悪質だ」という意見があったということ。これ、「有償での譲渡に対する処分が甘ければ(それが商売として成立してしまうことから、児童ポルノの流布という)加害行為を助長してしまうからダメだ」というふうに読めて、それならそれでいいんだけど、字面だけ見ると「児童ポルノの蔓延が(それ以外の性犯罪のような)加害行為を助長するからダメ」と言ってるようにも見えるんですよね。もし後者なのだとしたら、この発言者は児童ポルノを取り締まる根拠を被写体児童の人権保護としてではなく社会風紀の問題として取り違えており、そういう人が関わっていると条文が歪んで被害児童の保護が遅れたりいずれアニメや漫画も対象にしようとしたりするというのが今までの経験則。記事に起こした人の誤解ならいいんですけど・・・。


児童ポルノがらみではもうひとつ、警察がインターネットプロバイダにブロッキングをさせようとしてる話が進行してたり。何が問題になってるかと言うと、ブロッキングを実施する手法として導入しようとしているDNSポイズニングという技術はドメイン単位でしかブロックできないから、警察が想定しているような「連絡を受けたら即座にブロック」というような運用では児童ポルノに当たらないコンテンツまで巻き添えでブロック(オーバーブロッキング)してしまう可能性があるってことね。
あと、よりメタ的な問題としては、こういう形で行政が介入可能な枠組みを作られてしまうと悪用される可能性が出てくるということもある。一年前のガイドラインの段階では「十分な透明性と客観性を確保する」ということになっていたけど、ブロック対象として妥当なアドレス指定がなされているのかを恒常的にきちんと監査する枠組みも最初に作っておかないと、いつのまにか言論統制に使われる可能性なんかも出てくる。現に海外では既にそういう実例があるらしいしね。


てゆーかさ、警察官僚は日頃から「単純所持も罰しないと流布を止められないよ!」「ブロッキングしないと流布を止められないよ!」とか言ってきたくせに、今になって自分達の捜査体制を改めるようなことを言い出したりして、結局お前ら自分達で努力できることを今まで怠っておきながら自分達の権益拡大に都合のいいことばかりを口走ってきてたんだな、と思わずにはいられない。