ヒント:期待値


竹中平蔵氏のツイートがいろいろと物議をかもしているようで。30年だからって単純に30で割るのおかしくね?とかいうことで実際に1年あたりの確率は30年あたりの確率を30で割るよりも大きいって計算してる人もいるみたいだけど、仮に竹中氏の割り算の結果を受け入れたとしても、この1ヶ月での確率0.2%って、原発事故を誘発しうる大地震という事象の発生確率としては軽視できるほど小さいリスクじゃないと思うんだけど。


ある事故が起きる確率について、それが軽視できる値であるかどうかは、その値単体で見るのではなく、それが実際に起きたときの損害の大きさも込みで考えないとダメなんだけど、どうも確率の値単体で見ちゃう人がいて、その見た目の小ささゆえにリスクを過小評価してしまうことがあるようで。
実際、以前に、知り合いが手術を受けるにあたって医師から「手術によってその部位の機能を失うリスクが0.5%程度ある」って説明された、という話を聞いて、「存外に高いもんなんだなあ」「ありふれた手術でもやっぱそのくらいのリスクはあるもんなのか」と思ってたら、当の本人はとても低い確率で安心したみたいな様子だったから、その意識のズレに驚いたりした経験もあったり。まあそのケースでは、手術しなければいずれその部位の機能を失う状態で、手術を受ける場合のデメリットより受けない場合のデメリットのほうが遥かに大きいことが自明だったから、結果的には手術を受けたほうがいいという判断に違いは無いんだけどね。でもその判断に至る過程でのリスク計算の仕方は、確率の値だけに振り回されていてちょっと危うい。


今回のツイートに関しては、竹中氏本人は原発事故の損害をかなり低く見積もった上で言ってるのかもしれない。彼はかなりの資産を持っているだろうからたとえ事故が起きてもその後の安全安心をいくらでも金で買うことができるだろうし、いざとなったら海外に逃げることもできるからね。そういう意味じゃ、原発事故が起きた場合の竹中氏にとっての損害に照らして、発生確率0.2%は十分低いから急いで止めるな、という主張はそれなりに妥当とは言えるかもしれないけど、我々(彼ほどの資産を持っていない)庶民にしてみれば、彼と同じ認識に基づいて彼の主張に賛同するのは難しいよねw
でも同時に、前述したような、リスクを確率の値だけで判断しちゃう人たちにとっては、このツイートは「0.2%なんて低い確率なら、急いで原発止める必要なんて無かったんや」という結論へとミスリードされるに十分な内容でもある。
本質的には当人のポジションに有利な発言なんだけど、そうでないポジションの人たちにも擁護されうるような言葉を選んで発信してるあたり、マジ見事なポジショントークだなあと思いましたw