留年は最後の手段じゃね?


大阪の橋下市長が義務教育での留年を検討させるとかなんとか。


今の義務教育って、同じ年度生まれの生徒には同じカリキュラムを画一的に実施して、その成績がどうであれ9年行けば終了という実態だから、機会平等的な側面が強くて、できる子とできない子の差が大きく開いてしまうこともままある。で、どうなるかというと、高等教育を行なうべき場で分数だのアルファベットだのから教えなおさなきゃならないようなことになる。*1
これは本来ならば義務教育が「ある一定の学力水準を万民にもたらす」という役割を果たすべきところ、果たせていない尻拭いを高校や大学などがさせられている*2わけで、好ましい状況ではなく、これを是正するべく習熟度別クラスなり少人数学級なりを導入することで、より結果平等的な教育になるように(義務教育課程を修了した者が必ず規定の学力水準を満たすように)変えようという議論がそこここで進められているのが現状。まあそもそも、義務教育の範囲についてきちんとわかるまで教えてもらえないのは行政サービスの怠慢だから、何かしら改善が必要なのは間違いないね。
そうやって生徒の学力実態に合わせて柔軟な指導を行なう大前提において、この成績のまま進級・卒業させることが結果平等からは著しく外れ、本人の利益にもならないというような場合についてのみ、やむをえず留年という判断をする、というのであれば、義務教育における留年もアリなんじゃないかな、とは思う。


しかしながら、橋下市長の掲げる教育改革には教員の削減も含まれていたように思うので、子供1人1人に合わせた柔軟な教育を行なうためのリソースがきちんと現場に用意できるかどうか自体が不透明。
もし現行の指導方法と大差ないレベルで画一的な教育が実施され続け、それを受けた生徒達に対して留年を検討するというのであれば、できない子の多くが留年するだろうし、そうするとその学歴が就職上不利に働くということは十分にありえて、できない子はよりいっそう落伍しやすくなるという社会になってしまうでしょう。
いきなり「成績が悪いから留年!」という制度を導入するよりも、まずは「成績が良くなる指導方法」を導入することを積極的に進めて欲しいです。

*1:日本橋学館大の取り組みは素晴らしいと思いますが、それはそれとして、そのような対症療法を大学に強いるような教育環境がおかしい。

*2:高校や大学に進学しない人は、そういったフォローを受けることすらできないし、このような教育環境により勉学へのモチベーションそのものが抑制されてしまっているがために進学を希望していないのかもしれない