謝る権利も元々無い


ぽっぴっぽー等のボカロ曲で有名なラマーズPがBEMANIシリーズのSOUND VOLTEXに提供したリミックス曲のデキがよくないと批判されて謝罪した件。
どんなものであれモノ作りに携わっていれば、その出来不出来について何か言われてしまうのは不可避だし、それが個人攻撃や中傷に結びつかないかぎりにおいては自由な言論空間としてむしろ健全な状態だと思う。今回批判されているリミックス曲を自分も聞いてみましたが、ボカロネタ仕込みの賛否以前にいわゆる調教不足だし、インストも音の奥行きがぜんぜん無い上に単調で、それによって原曲と異なる音楽性が提示できているわけでもない、そもそもそこまで完成度が高くない、という印象で、デキが悪いという批判には相応の妥当性があるように感じます。
ただまあ、作品のクオリティについての評価をそのように置くにしても、ではなぜそのクオリティの作品が公式のものとしてゲームに収録されてしまったか、に関しては、発注者であるコナミの責任なので、原曲に思い入れがあって今回の件はどうしても許せんとかいう人は、作品批判もそこそこに、ラマーズPではなくコナミを責めるべきなのではないかと思いますが。
と同時に、楽曲のクオリティを管理し世に出すか出さないか決める裁量と責任を、そのように発注者たるコナミに帰すのを前提とするなら、ラマーズPが謝るのもおかしいよね。普通、顧客→元請→下請って形で依頼の流れがあったとして、下請が元請に提出した成果物を元請が顧客に提供した後、顧客がその内容に不満を持ったからといって、元請に断り無く下請が勝手に顧客に謝罪なんかしたら、元請の裁量範囲・責任範囲を侵犯する越権行為になる。そういう越権行為をする者とみなされ信用を損ねれば、以降の仕事にも影響が出るし、事と次第によっちゃ違約金なり賠償金なりが発生したりもしかねない。だから、自分の仕事内容に対し批判があったとして、たとえ自分でもその仕事内容に自信が無かったり不満があったりしたにしても、そのことはおくびにも出しちゃいけない。そこはクリエイターとしての覚悟云々なんかではなく、発注を受けて仕事する社会人として守らなくちゃいけないところ。
それが嫌なら、お金をもらって作品を提供するという立場にはならないようにするのが、誰も不幸にならずに済む唯一の道なんじゃないでしょうか。