だいび〜んざすか〜い

衛星破壊は、軍事なんつー狭い範囲に留まらない、国際的問題な件


マスコミの大部分が中国の軍拡の意志を指摘するばかりの中、
この件の真の問題点を正しく指摘した日経BPはGJ


確かに中国が軍事的事情からこのような行動をしたのは
間違いないだろうけど、それはあくまでも中国の企図で、
事態の一側面に過ぎない。中国の行動の結果として引き
起こされた悪影響については能天気なほど軽視している
のが日本のマスコミの実情。
上の記事でも指摘されているとおり、この行動については
軍事的脅威などという政治的・潜在的な問題なんかよりも、
より具体的・直接的で、下手をするとかなりの長期に渡る
かもしれない、宇宙開発への世界的規模の被害を与えた
ということが一番の問題。


ぶっちゃけ自分の仕事にリアルに関わってるからかなり
実感として危機感を感じる。
スペース・デブリの問題に関してはプラネテスとかを
見て知ってる人も多いだろうけど、現状ではデブリ
掃除する現実的な方法は無く、人工衛星デブリから
守るには、衛星の側でデブリを避けるように軌道修正
するしかない。で、人工衛星が軌道を変えるためには、
搭載されている(有限量の)推進剤を使うしかない。
で、推進剤がカラに近づいた衛星は運用停止になって
最後の噴射で大気圏に突っ込ませて燃やすのが原則。
あえて長々と説明したけど、つまるとこ、デブリ
増えるということは、(それを避ける必要のために)
運用中の人工衛星の寿命がすり減らされてしまう、
ということ。予定の運用期間を満たさず運用停止
となれば損害はかなり大きい。


さらに、軌道を変えるということは、本来は通って
いたはずの軌道を通れていないわけだから、観測や
通信など、その衛星が担ってる機能の運用計画にも
大幅な変更が出るかもしれない。これだって調整は
人手を介してやってる現状だから、デブリが増えて
調整の必要が増えれば運用コストも増える羽目に。


加えて言えば、避けることのできるデブリというのは
“見えて”いるものだけに限られるから、現状の観測
システムで捕捉しきれない小さなデブリについては
避けようがない。
見えざるデブリに運悪くぶつかって機能停止となれば
当然損害は大きい。それだけではなく、もし推進機能
(ないしそのための制御系や通信系)がダメになったら、
その衛星自体が巨大なデブリになってしまう。あるいは
衛星が爆散するようなことにもなればデブリが連鎖的に
増えていく最悪の展開もありうる。


実運用の立場から見てもこれだけの影響があるわけで、
真面目に金額換算すると相当な被害が出てるはず。


驚くのは、これだけのことが言われていてもまだ、
アメリカ・ロシアが先にやってるのに後追いの
中国だけ非難されるのは不公平」論を唱える人が
いるということ。
核実験なんかについては政治的建前の比重がかなり
高いからそのような理屈も一理はあるかと思うけど、
今回の件については世界規模の被害を与えてるのが
明白なわけだから、そんな理屈は一切通用しない。
毒性廃棄物を海に流しておきながら「昔は誰も彼も
海洋汚染なんて気にせずやってたくせに」と言い訳
するようなもの。具体的な害があるが故にストップ
されてることをあえてやったのだから、非難される
のは当然でしょう。


こんなことする連中はマジむかつく。単に感情的な
ものじゃなくて、理性的な憤りを強く感じます。