へたり放送局

ヘタリアのアニメが放送中止になった件


公式の告知では「諸般の事情」ってことですが、上記記事のとおり、韓国からの批難が原因なのではないかと。以下、その前提で話を進めます。


そもそもこのヘタリアは、各国を擬人化して笑いをとるという、いわゆるエスニックジョーク的側面のある作品なので、批難を受けやすいのは元々わかっていたはず。それでもなおアニメなどメジャー化の路線を志向するのなら、今回のような事態についての予想も覚悟も当然してあるのだろうと思ってたんだけど、どうやらそうではなかったみたいですね。


実際に放送中止に至ったことについて、韓国からの批難を言論封殺とみなし表現の自由を訴える人もいるようですが、それは表現の自由の履き違えというもの。表現の自由は、(他者の人権を侵さない限りにおいて)どのような表現についてもその存在を許容するものであり、すなわち表現に対する批判もまた1つの表現として尊重されます。国家権力や暴力・脅迫などといった方法で表現をやめさせようとする行為にこそ抗するためのものであって、表現内容への批判を止めるものではありません。*1
つまり、表現の自由を掲げるのであればこそ、自身の表現に対する批難が起こりうることを認め、それゆえ表現するにあたって慎重さと覚悟を伴わなければならないのです。


韓国からの批難そのものについては、そう言う韓国自身もまたヒロシマの焼け跡で歌うPV作ったりとかMMOのMobを日本人にしたりとか親日派狩りイベント実施したりとか色々してるしねぇ・・・。ヘタリア内での描かれ方が的外れかどうかという点についても、「おっぱい触らせるんだぜ!」のくだりのようなことを実際にやっちゃってるしなぁ・・・。


とは言え、彼らが反発することはもうわかりきっていたはず*2だし、万が一そうでなかったとしても他の国々からの評判が悪くなることも考えられる(実際にはウケてる人たちにはウケてるらしい)わけですから、そういった作品の内容についての批難を受けて放送を取り止めるのだとしたら、(先述のとおり表現の自由の問題ではなく、それは放送局側=表現の発信者の自主判断による中止であるから)冒頭で述べたとおり「覚悟が足りなかったね」という話になります。


こういうことがあると、「日本人は国家・民族に対する帰属意識について鈍感すぎる」みたいな話が出てきます*3が、実際そのとおりだと思います。
欧米での日本人のステレオタイプといえば眼鏡チビ出っ歯カメラ背広ってのがお決まりですが、アメリカ人が「HAHAHA!日本人てこんなんだよな!」とか笑うなら、私なら「HAHAHA!お前らの日本人観も変わらねぇな!」とか言って一緒に笑うだろうし*4、最近でも洋ゲー(戦略シミュ)の日本キャラユニットがギャグみたいなステレオタイプだったけど、これに目くじら立てるような人は稀な気がしますし、今回の件で憤った韓国人の描いた日本人の擬人化=コギャルのイラストも、見た人たちからは割と「アリじゃね?」みたいな評価を受けてたりします。
自分たち自身についてここまで無頓着なものですから、こういうことに過敏な人たちの気持ちを汲み取りにくいってのはあるでしょうね。私自身も気を付けたいところです。

*1:もちろん今回の“批難”の中に脅迫じみたものが含まれていたのなら、表現の自由を語るべき事案です。

*2:というか、創作活動上において安易にかの国と関わるべきではない、ということは数多の前例から得られた重要な教訓ではなかったの?

*3:しかし今回の件でそれを主張する人たちが常日頃は「日本の愛国主義は危険だ!」とか言ってたりして、イデオロギーってとっても難しいですね。

*4:デイ・アフター・トゥモローだったか、何か真面目な映画の中ですらTokyoの描写がやっぱりちょっとおかしくて笑ったこともありましたけど、そのことが作品全体の評価を減じることは無かったし。