性暴力ゲーム報道の続き

この話題、思いのほかいろいろと波及しているようで。


この件についての報道はしょうもないものが多いですが、特に酷いものがあったので指摘しときます。

インターネットで国を越えて情報が流通するなか、子どもを性的に描写した児童ポルノの扱いが国際的な問題になっており、米国や英国などは漫画やコンピューターグラフィックス(CG)の画像なども含めて製造や販売を禁止している。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/s-news/20090513-OYT8T00357.htm

米国が架空表現の規制まで行なっている、というのは全くの嘘。デタラメ。明らかな捏造報道です。
確かにそのような法律が一度成立してはいますが、最高裁によって違憲判決が下されてるんですよね。Wikipediaでは次のように述べられています。

Provisions against virtual child pornography in the Child Pornography Prevention Act of 1996 were ruled unconstitutional by the U.S. Supreme Court in 2002 on the grounds that the restrictions on speech were not jusified by a compelling government interest (such as protecting real children).

http://en.wikipedia.org/wiki/Child_pornography

この件に関して読売新聞は規制派にご執心のようなので、規制派の皆さんにいっぱい取材してるうちに、どっかで嘘を吹き込まれてそれを鵜呑みにしちゃったんでしょうか?まさか意図的にこんな嘘を書いたわけじゃないですよねぇ?
まあそもそも、外国と足並みを揃えろ!って主張自体がおかしいんですけどね。性犯罪発生率が日本の数倍〜十数倍にも及ぶような国々にあわせる意味なんて無い。


海外でもAFPを通じて各国語で配信されてる模様。興味深いのは、どういうわけか海外の報道においても児童ポルノに絡めた記事になっている点。

Japan, often criticized as a major producer of child pornography, in 1999 banned the production, distribution and commercial use of sexually arousing photos, videos and other materials involving those aged under 18.

http://newsinfo.inquirer.net/breakingnews/infotech/view/20090508-203897/Japanese-firm-shrugs-off-rape-game-protests

前掲の読売の記事もそうですが、日本国内の報道はどれもこれも当該ゲームが児童ポルノに関係があるかのような報道になっています。しかし、当該ゲームが架空表現であること(これは以前のエントリで触れたとおり)に加え、「性交するキャラクターは18歳以上でなければならない」とするソフ倫の規定をパスしている以上は児童に相当するキャラクターですらないわけで、本来この話は二重の意味で児童ポルノには関係が無い話のはずなんです。
にもかかわらず実際の国内報道が児童ポルノの話を引き合いに出すのは、露骨に誘導する意図があるとしか思えません*1。そういう状況がある中、どういうわけかAFPの記事内容もまた上掲のように児童ポルノについて言及しているわけです。こんなそうそう間違えようの無い間違いが国内と海外で同時期に生じているという現象は、日本国内の(おそらくは規制に肯定的な)誰かが、そのように捻じ曲げられた認識を流布させているせいで起こっているのではないかと疑われます。今後もしこの件を児童ポルノに絡めて報じるような記事が出てきたとしたら、それが国内のものであれ海外のものであれ、そのような捻じ曲がった認識を流布させるためのプロパガンダないしアジテーションなのだと断じてよさそうです。


海外報道も今のところ規制派のコメントを多く紹介してる傾向があります*2が、特に目に付いたのは以下の記述。

Illusion, the software firm that produces RapeLay, has so far resisted calls to withdraw the game, saying it complies with Japanese child pornography laws. "The game is not intended for sale overseas, so we can't comment further," an Illusion spokesman told the Guardian.

But campaigners challenged the firm's claim that it was targeting only the Japanese market, where such games are considered "acceptable".

"The age of the internet means it's impossible to confine anything to a specific market," said Hiromasa Nakai, a spokesman for Unicef Japan.

http://www.guardian.co.uk/world/2009/may/11/japan-child-pornography

日本ユニセフの中井裕真氏ですか。
仮に、「銃規制の緩やかな国があるから日本への銃密輸が減らなくて困る」ってアメリカに言ったらどうなるか。あるいは「大麻規制の緩やかな国があるから日本への麻薬密輸が減らなくて困る」って一部の国々に言ったらどうなるか。そして「だからお前の国の規制を厳しくしろ」と言葉を継いだら?おそらく「内政干渉だ」と一蹴されて終わりでしょう。「密輸取締りの問題だ」と。
メーカー自身が加担しておらず、またするつもりの一切無い海外販売が、今回のように問題化しているのなら、それはその海外販売を行なっている販売業者を責めるべきなのは明らかです。彼らの主張がいかにズレているかわかろうというもの。これは昨日述べた海賊版の問題と同じですね。


しかしこれだけいろんな新聞に取り上げてもらえるってことは、人権団体って思いのほかお金持ってるんですね*3。架空表現の規制などという実効性の怪しい方策なんかより、実在する被害者の支援とか、もっと意味のあるお金の使い方すればいいのに。

*1:少しでも興味関心があれば気付くはずなので、あえてやっているのなら悪質な、裏を取らずにうっかりやってるのなら怠慢な報道です

*2:日本国内に規制反対の有力団体が存在しないがゆえに、このようなワンサイドなコメント集積になってしまっているんでしょうね・・・。

*3:各新聞社幹部を抱き込んでるってことでコネもあるんでしょうけど。