まだ慌てるような時間じゃない

「エロゲの自主規制が厳しくなるよ」ってTBSが報じた件。・・・について書こうと思ってたんだけど、どうも飛ばし記事くさい。
最速VisualAntena!のbbsに次のような書き込みが。

name: vavaしゃちょー
ソフ倫いわく。

1.少し前にTBSからレイプレイのことで取材があった。
2.受けてみたが、ソフ倫として意図しない形に編集されて放映された。
3.二度目の取材依頼が先日きた。
4.2のようなことがあったので、お断りした。
5.昨日の報道が突然流された。

だそうですが…
2009/05/29/12:08:38
最速VisualAntena[最速ビジュアルアンテナ]

これがVisualArtsの馬場社長本人の書き込みかどうかも定かでないし、そのソフ倫の言とやらも定かでないですが・・・しかし、現時点でこの件を報道したのがTBSの当該ニュース一件のみという現状からして、TBSの飛ばし記事であると考える蓋然性は高い。


そういうわけなので、この件については6月2日にあるらしいソフ倫の懇談会の詳報を待つことにします。まあ、加盟企業の過半数の賛成をもって規約を変えるのが通例だそうなので、陵辱ゲーを一律自粛などという無茶苦茶なことにはならないと思いますけど。

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と、これだけで終わるのもあれなので、最近ちょっと気になってることについて一点だけ。


あのエントリを書いてより久しく、規制反対派の多くの人が日本の犯罪の発生率の低さを知るに至ったようですが、諸外国との犯罪発生率比較のデータについて、まずい使い方をしてる人がいらっしゃるよう。
例えば上掲のリンク先で引用されている2ちゃんスレにおける以下のような応酬。

324 : カロライナジャスミン(catv?):2009/05/28(木) 19:39:11.19 ID:laH3Ydsc
国別レイプ発生率 
1位 南アフリカ 1.19538 per 1,000 people 
3位 オーストラリア 0.777999 per 1,000 people 
5位 カナダ 0.733089 per 1,000 people 
9位 アメリカ 0.301318 per 1,000 people 
13位 イギリス 0.142172 per 1,000 people 
15位 フランス 0.139442 per 1,000 people 
16位 韓国 0.12621 per 1,000 people 
24位 ドイツ 0.0909731 per 1,000 people 
41位 ロシア .0486543 per 1,000 people 
54位 日本 0.017737 per 1,000 people 
ttp://www.nationmaster.com/graph/cri_rap_percap-crime-rapes-per-capita 

文句言う国は日本より性犯罪率下げてみろよ 


579 : イワザクラ(群馬県):2009/05/28(木) 19:43:37.49 ID:VmvrAccQ
>>324 
規制でレイプ発生率上がったらどうするの!? 
十分低いのに一部を見すぎだろマンナン野田みたいだ
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1268068.html

この579のような反応、いわゆる「規制がゆるいおかげで犯罪率が抑えられている」という発想に基づく主張は、「規制がゆるいせいで性犯罪が増えている」という説と同様に科学的根拠が薄いばかりか、「規制対象として俎上に挙がってるメディアを愛好するような人間は、規制されたら犯罪に走るような危険な奴らだ」という根も葉もない悪印象を流布することになります。
これはよろしくない。


このような、「日本は、より厳しい規制を実施している諸外国よりも、犯罪の発生率が低い」という統計データの真価は、外国に倣え式ゴリ押し(「先進諸国では厳格な規制が当たり前」「国際的な潮流から孤立するな」)の規制推進論を封殺できるという点にあります。
この効果を最大限発揮するための言い回しは、「このデータにも現れているとおり、日本には日本固有の環境・文化があり、外国がやっているからといってそのまま同様の規制を実施することは認められない」みたいな感じ。


規制推進派も統計データを突きつけられることに慣れてきたのか、「日本ではレイプ被害にあっても泣き寝入りする被害者が外国よりも多いから、統計データよりも被害実数はずっと多いんだよ!」という反論をしてくることがあります*1が、そうなればこちらの思う壺。「規制の必要性については日本固有の内情を無視するくせに、統計データの解釈には日本固有の内情を考慮するんですか?それってダブルスタンダードですよね?」と言えばOKです。


つまり、この統計データについて、相手が肯定・否定どちらを採っても、相手は「日本固有の事情を考慮しなければならない」ということを認めざるをえない形に持ち込むことが大事です。
まあ、各国ともその国自身の事情に沿って自身の法を決めるってのは当たり前の話であって、こんな修辞をこらさなければ主張として通らないこと自体が異常なんですけどね。


こうやって、外国に倣え式ゴリ押しを封じてしまえば、規制推進派は、日本において当該規制が喫緊に必要であるという根拠を、日本の事情に立脚した内容で改めて立論する必要に迫られます。そこから初めて、中身のある議論が始まるのです。





※最近の規制論は児ポ法以外のものが増えてきてるので、「表現規制」タグを新設しました。これからはこっちのタグも活用していくことにします。

*1:さっそく、件の人権団体もこの反論法を活用しているようで。こりゃ明らかに日本国内で通じてる人がいる、てか日本国内の規制推進派のスピーカーとして当該団体が動いてると見たほうがよいか。