こじつけのみせしめ

既報のとおり、児ポ法の修正協議が今日おこなわれたはずなのですが、結果について何も報じられていないところをみると、与党案と民主党案の歩み寄りはできてないってことなんでしょうか?


かわりに、児ポ法がらみのニュースがちらほらと。規制強化推進のためにこうした動きが活発になってる感じですが、中でも気になったのは掲示板の開設者が逮捕された件。
おそらく、その掲示板というのは、児童ポルノ情報の収集を目的として、そういったサイト情報の掲載を推奨するような記述がなされたものだったのでしょう。確かに、そういったサイトが児童ポルノの流布に加担してることは明らかですが、

少年は昨年8月、児童ポルノサイトのアドレスが掲載されることを知りながら、この掲示板を開設した疑い。調べに対し、「犯罪になるとは思わなかった」と話しているという。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090708-OYT1T00078.htm

「アドレスが掲載されることを知りながら、この掲示板を開設した疑い」というのが、現行法において可罰性を問うのには無理筋なんじゃないかと。摘発したい気持ちはわかりますが、もっと他に罰すべき事情を根拠として付け加えない限り、処罰できる範囲が広がりすぎてしまいます。もし仮にこの字義どおりの根拠だけで処罰できるとするなら、不特定多数の閲覧者に対して書き込みを許すような類のウェブサービス、すなわちウェブ上に存在する掲示板の大部分が、「アドレスが掲載されることを知りながら、この掲示板を開設した疑い」に引っかかってしまうはず。例えばこのブログのコメント欄も非承認制のため誰でも書き込むことができますが、そこに誰かが児童ポルノサイトへのリンクを書き込む可能性はゼロではないわけで、警察の気分次第では私も逮捕される、ということに。
ウェブの今の実態からすれば、このような理屈での逮捕は警察権限の無制限拡大にも等しく、無茶苦茶もいいところ。なので、本当はおそらくもっと込み入った法理や判例が存在していて、それに基づく逮捕だったんだけど、報道では図式を単純化してこのように説明しているだけなのではないか、それならば実際はまっとうな逮捕だったんじゃないか、という可能性を疑い、様子を見ていたのですが、全くもってそんなことはなかったぜ。


こういうことを見せつけられると、「警察は法の恣意的な濫用などしない」という葉梨康弘議員の言葉がいかに空虚かわかろうというもの。改めて、児ポ法のずさんな規制強化論は排撃すべきだと思いました。