サマーウォーズ感想
睡眠時間の調整にミスったので、今日はコミケをパスしてサマーウォーズを見てきました。以下ネタバレ。
娯楽作品としては良くできていて、楽しい作品であることは確か。ただ、個人的にはノリきれない感じのところも少なからずありました。
1つは、一家族が世界の危機を救う*1という、いわばセカイ系のようなあらすじからして陣内家にフォーカスが集まりすぎてて、ご都合主義を前提にして視聴するにしても自分の中の限度を超えて「ちょっと陣内家最強すぎるだろ」といった萎え方をしました。
おばあちゃんが各界の重鎮たちに電話をかけるシーンも、去る者は追わず的に他者との繋がりを続けずに生きてきた自分としては痛切に「コネって大事だよなあ」と感じると同時に、「いやいや待て待て、ばあちゃんのコネどんだけだよ」とか思ったし。
クライマックスシーンでは夏希の賭けに乗ってくれる全世界の見ず知らずの人々、というものが描けていたのだから、劇中のもっと早い段階から、事態を改善させるために主人公たちの動きに呼応し協力する見ず知らずの人々というのを描けていたら、陣内家だけで話が進んでしまう閉塞した全能感は薄れていたんじゃないかな〜と思います。*2
ご都合主義という点について言えば、物語の展開も作劇上の都合で左右されてる箇所がくどかった。熱暴走のくだりとかは顕著だし、「知らない人と騒ぐのは苦手」→「ここに来て良かった」の心変わりの描写不足とかなんかも。そういうのが色々と積み重なっているので、消化したいイベントがあってそのために物語を駆動させてるような、そういう作為が感じられてしまい、魅力がガクッと下がってる。
クライマックスの見せ方も、ちょっと地味目というか、盛り上がりにくいネタをわざわざ持ってこなくても・・・という気がしました。それを盛り上げるのがクリエイター側のチャレンジなんだ、ってのはあるにしても。
こいこいは若い人は知らないだろうから「こい!」「こい!」っていうクライマックスの連帯感がわかんないかもしれないだろうし、カズマのリベンジも最後は相手の防御力を下げるチート使ってのパンチ一発だし、主人公の見せ場もひたすら暗号解読だし。いずれのシーンも巧みな演出によって一定のカタルシスはきっちり出せてたけど、もうちょっと何かできたんじゃないの?という気がして残念。
細々した技術の話をすればキリないけど、「固定の数列が見えててそれを解けばOKな暗号って何よ?」とか「だいたいハッキングAIなら独力でそれを解くよう動くはずで、にもかかわらずそれを一般ユーザに解かせるように仕向けた意味が解らない」とか「重大なインフラの制御システムがなぜ大衆向けSNSのレイヤー違いみたいな形で実装されてんだよ」とか「つーかそもそもグローバルに繋げる必要の無いシステムは繋げないのが基本だろ」とか「GPSによる補正処理とか組込み系のはずだからソフトウェアのハードコーディング的な書き換えが必要なはずなのに、主人公はコードの中身を見てもいない状態で何をどうしたの?」とか「愉快犯ならまだしも、諜報活動に使おうってのに、仕掛け人が停止コードを送って止められるようにできてないプログラムって何なの?攻殻の人形使いなの?」とか。
普通ならそのへんはご都合主義でスルーできるんだけど、前述のように色々と萎える部分が多いと、こういった細かなところまで不満点として気になってきてしまう。なんというか、作りの甘い、ヌルい脚本なんじゃないかという印象です。
いろいろとネガティブなことを書きましたが、漫然とただ楽しむだけに見るのなら良い映画なので、気になる人は見に行ってみてはいかがでしょうか。
*1:しかもその危機の元凶すら身内だし。
*2:2ちゃんねる閉鎖危機のときのことを考えれば、実は見ず知らずの人々による共同というもののほうが、いま現在のリアルだと思うし。