リンク=自爆用地雷?

少し前の話題ですが、URLだけを掲載することも児童ポルノ公然陳列罪の正犯になるという判決があったとのこと。ブログという形で毎日ウェブサイトを更新している自分の感覚で言うと、これはウェブの実態を踏まえていない無茶苦茶な判決だと思います。


おかげさまでこのブログも600超のエントリをあげさせてもらってますが、その中で外部のサイト様にリンクを張らせていただいて話の起点にしているパターンが数多くあります。今回のエントリもそうですね。しかしリンク先の状態というのはあくまでリンク先の都合で変わるものです。例えば、世界中の不思議な風景写真を集めたサイトへのリンクを張って「ここに興味深い写真がたくさんあります」と紹介していたら、1年後にはアダルトなページに変わってました、なんてこともありえます。
もしこのとき、リンク先が児童ポルノ掲載サイトに変わっていて、それに気付かずに放置していたところ、事情を知らない人がその状態に気付いて、「児童ポルノにリンク張ってる!」って告発されたりしたら、私はどーなっちゃうのでしょうか。とりあえず児童ポルノ公然陳列罪の正犯として逮捕・起訴されて、「当該エントリを作成した時点ではリンク先はそのようなサイトではなかった」ことを私が立証しないかぎり有罪になってしまう流れ?この判決が示唆しているのはそういう可能性です。恐ろしいですね。


「でも気付かないうちにリンク先が違法サイトになってるなんてこと、あるの?」と不思議に思う人もいるかもしれません。単なる想定に過ぎず現実的では無いのではないか、と。しかし残念ながら、無視できるほど可能性の小さいことではないと思います。
日本のサイトでも.comドメインが一般的になって以後、様々なサイトが,comドメインで運営されてきていますが、ある程度アクセス数を稼いでいたサイトがドメイン名を変更したり閉鎖したりするなどしたとき、空いたドメイン名が(元サイトの開設者とは別の者によって)購入され新しいサイトが開設されることがあります。なぜそんな“跡地買取”みたいなことをするのかと言うと、アクセス数の多いサイトは他サイトからの被リンクや閲覧者のブックマークが多く、アドレス変更や閉鎖が十分に周知されるまでの間はそれと知らずにその(元の)ドメイン名にアクセスする訪問者がある程度まとまった数いるので、アクセス数を稼ぐのに有効だからです。ちょうど、人気のラーメン屋が移転した跡地に別の新しいラーメン屋がやってきて、元のラーメン屋だと勘違いして訪れる客を待つ、みたいな。
そしてそういう目的での跡地買取というのは、海外のアダルトサイトによって行なわれるケースが体感でかなり多いんですよね。特に.comドメインは世界中どこからでも買えるので。その海外アダルトサイトに児童ポルノが掲載されていないとしても、モザイクやぼかしの入っていない海外製ポルノは日本ではわいせつ物として扱われるのが通例で、上掲の判決で児童ポルノ公然陳列罪が認定されるなら、児童ポルノでは無い海外製ポルノでも同様にわいせつ物公然陳列罪が認定されると言えるでしょう。そういう事情があるので「いつのまにかリンク先がアダルトサイトになってたのに気付かずにいたら逮捕・起訴されたでござるの巻」という危険性は、脅威を感じる程度には可能性が高いと思います。


予防的措置としては自身のサイトから張ってるリンクを全て頻繁にチェックする、しか無いと思いますが、現実的ではないでしょう。私自身も、600以上ある自分のエントリから張られているリンクをいちいち頻繁に見直すなんてできるわきゃないです。せいぜい、それぞれのリンク先で怪しげな跡地買取が起きないよう祈るくらい?アホな。


この判決を下した大阪高裁の裁判官は何を考えてるのかと。そしてこの案件を正犯で起訴した検察官は何を考えているのかと。できることならどちらとも速やかに職を辞して欲しい気分です。


最後に、引用元の奥村弁護士のコメント。

3項製造罪の実行行為の問題もそうですが、児童ポルノについては、裁判所がフリーハンドで条文創設していますよね。

2009-10-23

まったくもって。