一億総容疑者時代


ニュースとかからちょっと離れて世事に疎くなってたところ、時効撤廃の法改正が通って即日施行されてたそうですね。


感情的には賛成したいところでもありますが、冤罪が生まれやすくなる可能性もあるんですよね。まあ殺人事件の時効は改正前でも25年だったそうですけど、例えば60歳の人のところに警察がやってきて「30年前の殺人事件の犯人として、貴方に嫌疑がかけられてます」つって逮捕されたとしたら、取調べや法廷において有効な反論ができるでしょうか?30年も前の特定の日にどこで何をやってたかなんて本人も周囲の人も覚えてなんかいないし、現場の様子や物品だって変化なり風化なりしてるはずだから、被告にとって有利な証拠は(証言であれ物証であれ)何も集められないのではないかと。そうすると、警察や検察が用意した証拠のみが効力を持つことになって、有罪になることは免れない。彼が本当に真犯人だったんならいいんだけど、すでに判明している冤罪事件なんかでも警察や検察が提示した証拠がきちんと検証されないままに有罪になってたりする経緯があるわけで、そういう現状があるところで時効を撤廃すると、「捜査機関がいいかげんな証拠で起訴したのに、被告は反論するための証拠が集められずに有罪になる」というパターンが増える恐れがあります。


未解決事件の遺族や関係者にしてみれば、犯人が捕まらないことへの憤りがあるのはわかるけど、犯人を逮捕できるかどうかはおおむね初動捜査がうまくいったかどうかによるところが大きいと思いますが、そこで取り逃がしてしまっているのなら、言っちゃ悪いけど、数十年たって真犯人が見つかって捕まるなんてことはほとんどありえないでしょう。その意味じゃ、未解決事件が未解決たるゆえんは、初動捜査に失敗した捜査機関の無能さと言うべきであって、捜査機関の手法や体制をこそ見直す必要があるのではないかと。それをせずに時効を撤廃するってのは、百害あって一利もないように感じられます。