誰が為の検証よ


パクリ疑惑が持ち上がってたラノベが、絶版・回収され、出版社と著者が謝罪する事態に。


「著者が認めて謝罪してるんだから疑惑は確定だろ」で済むなら話は簡単なんですけど、騒動の経緯を考えると、「疑惑の真偽はどうあれ、疑惑を追及する声が風評被害になると嫌だから、ごめんなさいします」ってことで今回の結果になった可能性も十分ありうるんだよね。
いや、検証サイトに挙げられてる部分を読めば確かにある程度の類似性を認めることはできるけど、それでも300ページ近くある作品のごく一部に過ぎないわけで、それらだけで果たしてパク確定と言えるのか。もちろん、挙げられている記述が元作品にユニークなものゆえ偶然の一致はありえないのかもしれない(ラノベあんま読まないから私はそこの判断はできない)し、もしかしたら他の記述の大部分も気付かれてないだけでパクり満載なのかもしれない。クロである可能性は大いにありうる。
でももしこの作品が完全にクロだったとしても、もしも今後、偶然の一致で類似した記述(特に、ありがちすぎるフレーズや展開等、いくらでも似てしまいうる記述)を取り上げて“パクり疑惑”とされて同じように騒がれる作品が出てこないとは限らない。そういう濡れ衣の騒動が過熱したときに「風評被害が嫌だから濡れ衣でも謝る」以外の落としどころが無いんじゃないかと思うんだよね、今回の盛り上がり方を見てると。
で、そういう懸念があると、怖くて何も書けなくなる人も出てくるんじゃないの?既存の作品のどんなフレーズとも類似しない文言だけで構成された文章を数百ページに渡って書き連ねなければならないなんて、書く上での相当な負担になるわけだから。


そういう意味じゃ、この件はここで終わりにしてはダメで、この後のフォローが大事になってくるんじゃないかと思います。今回発表された謝罪は(特に著者の謝罪は)形式的なもので類似箇所についての具体的事情への言及が無いゆえに、上記のような「風評被害重視で謝った」という憶測が出てきてしまうわけですが、後日この出版社が進めている「調査」の結果がきちんと公表されて「間違いなく作為的に行なわれたパクりである、ゆえに絶版・回収・謝罪を行なった」ということが明らかにされればそのような憶測も薄まりますし、仮に後々の作品において偶然の一致による類似性があげつらわれるような事態が起きても「何も後ろ暗いところは無い」と主張できれば疑惑を退けることができる、という構図になるでしょう。
そして受け手側の我々も、集合知を生かしてパクり検証をするのは勝手ですが、それによって浮かび上がった疑惑については必要以上に盛り上がるべきではなく、まして作者の首級をあげることを最終目的とするのはもってのほかで、その疑惑に対する出版社の対応を冷静に受け止めるべきでしょう。決して「俺らの勝利だ」などと騒ぐようなことの無いように。