この業界は万年金欠よ


はやぶさ最期のお勤めもちゃんと果たしたようで。お疲れ様でした。


今回の一件ではやぶさが広く知られるようになり、その後継機の予算が事業仕分けされてることを疑問視する声も挙がってるようですけど、これに関しては「はやぶさの偉業を理解しない財務省とその言いなりの仕分け担当者」みたいな単純な構図ではないんだよね。


もともと日本の宇宙開発の予算ってのはかなりカツカツでやってきていて、実利用向けの衛星でも予備機無しの一機のみ綱渡り運用は当たり前、加えて後継機の予算も通るかどうかは不確定的だから、各衛星の担う機能がいつ無くなってもおかしくないような状況。ひまわりの後継どうすんだよってのは一時期話題になったとおり(結局は気象庁が単独で打ち上げることにして予算が通ったみたいだけど)だし、ALOSによる観測の引継ぎは絶対に失敗したくないからADEOS-IIの轍を踏まないようALOS2・ALOS3は中小衛星にしようとか検討してるし、なかなか後継の目処が立たなかったASTERなんかは設計寿命ぶっちぎりの運用だったりするし、ようやく打ち上がる準天頂衛星にしても当初の官民共同の計画が見直されてたりして準天頂運用に必要な3機全部が打ち上げられるかどうかも確定じゃないっぽいし。
そうやってギリギリの、あるいはガタガタの運用が強いられている実利用サイドからすると、実利用にすら満足に予算が回ってないのに、将来のための投資としての野心的な研究開発に大きな予算が投じられることは反発があって、実際に、はやぶさ自体についてだって、素人ではない、むしろ宇宙関連事業に深く関わる立場の人が「そのプロジェクトに何の意味があるんだ」と、批判的であったり冷淡であったりするのも実際に見てきてたりする。そういうの目の当たりにすると「目先の実利用や事業化や商業利用拡大にばかり目を向けてんじゃねぇよ」と言いたくもなるけど、しかし国費で宇宙開発をしている以上は何らかの形で民間に還元しなければいけないわけで、実利用をおざなりにして野心的な研究開発に予算を割くべきじゃないという主張にも一理ある。


なんでそうなってしまうのか、何が悪いのか、と言うと、宇宙開発に投じられる予算総額が小さいことが全てでしょうね。実利用サイドの要求がある程度まで充足できるだけの予算が下りていれば、はやぶさのような野心的な研究開発にも予算が回ることについて反発は小さくなるはずですが、そのどちらをも賄えるほどの予算が用意されていないのが現実。みんな貧乏が悪いんや、ってなもんで。
だから、はやぶさ後継機の製造に着手してほしいと思う人は「はやぶさ2に当初予算どおりの金を付けろや〜」と言うだけではダメで、上で挙げたような実利用サイドに対しても、その関係者たちの不満の声を黙らせられるだけの予算を付けてあげないことには、先進的なことはバリバリやってるけど実利用は限りなくプアという、非常にアンバランスなことになってしまうでしょう。宇宙開発ははやぶさだけじゃないんですよっと。


ま、これを機に宇宙開発に興味を持ってくれる人が増えてくれればいいと思いますけど。この一時の熱狂で終わってしまうことなく。