危機に備えよ


今週の月曜日に福島原発事故調査・検証委員会の中間報告があって、民放でも検証特番が放送されたりもしましたが、全体的な印象としては、やはり政府・東京電力の準備不足が招いた事故のように思える。
ひとたび異常事態に陥ってしまえば、判断の精度や道具の調達能力は著しく低下するもの。担当者がどんなに専門家であろうと、限られた時間の中で限られた情報から適切な判断を下し必要な道具立てを手配するのには限度がある。だからこそ、平時のうちに考えられうる想定をできるだけ網羅し、できるかぎりの準備をしておいて、いざ何か起こったときには少ない手数で事態に対処できる体制を整えておくことが有効なわけでね。
行政機関としては、事故発生時の政権がどのようであろうとやるべきことを実行できる組織と制度を整えておき、いわゆる政治判断が必要となるような局面を可能なかぎり少なくなるようにしておくべき。SPEEDIが避難区域指定に役立てられなかった一件だけ見ても、各部署の担当者の胸先三寸で情報が出たり出なかったりする構造が見て取れて、どの情報をどのように利用するのか全く対応手順が決められていなかったお粗末さが伺えます。
東京電力に関して言えば、設備の設計そのものからして万全の体制で事故に備えようという意志が全く無かったように見受けられます。津波によって全電源を喪失してしまうような電力系に始まり、予備電源をすぐに調達できる体制になっていなかったことや、電力が無いかぎりまともな作業が行なえないような構造、ベントの手動解放弁に至っては(事故時を想定すれば当然に放射能レベルが高くなるであろう)炉の目の前に設置しておきながらそこへ至るルートには何ら防護措置が採られておらず、何とか弁の解放に成功してもベントの排気ルートが独立のものでなかったがために水素が建屋内に逆流したかも、だなんて。発電所なんて一度稼動し始めれば基本的には定常運用だけなんだから、事故に備えた検証や改善なんていくらでもできるヒマはあったと思うんだけどねぇ。充分な安全措置を採らないことでコストを浮かせたぶん自分達の給料だけはいっぱいもらって、安全措置を採らなくても責任を負わずに済むような理屈を編み出すことにばかり血道を上げてるようなこんな組織、やっぱすぐにでも清算しなきゃダメなんじゃないの?