ダメな実名もいるっしょ


匿名の放言を許すな・納税してない奴は政治に口を挟むな・日本の格差ごとき甘受しろというご意見。


誹謗中傷の類は匿名・実名の別に関わらず控えるべきだと思いますが、それに抵触しない範囲でなら、むしろ匿名の発言はガンガン推奨すべきなんじゃないかしら。
そもそも、あるアイディアが素晴らしいものなのか、それとも愚にもつかないものなのか、てのは、そのアイディアの中身が世に広く問われてみてはじめてわかることでしょう。発案者にとっては素晴らしいと思えたアイディアが、他の人に開陳してみたら実は大したものじゃなかったことがわかった、とか、逆に自分ではくだらないと思っていたアイディアが、試しに口に出してみたらとんでもないブレイクスルーの元になった、とか、そういうことはいくらだってある。
だから、いいアイディアが欲しいと思ったら、各人の発言権に枷をハメて(本人が素晴らしいと自負するようなアイディアしか発言しないように)発言のハードルを上げるよりも、とにかく何でもいいから発言させて、その中から選び出すほうがいい。例えば、企画会議のような場で、「ロクでもないこと言ったら承知しないからな」ってプレッシャーをかけた状態から5つのアイディアが出てきた場合と、「バカげた考えだと思えてもいいから、思いついたことを話せ」つって出てきた100のアイディアから5つを選び出した場合とでは、後者のほうがよりよいアイディアが生まれてくる可能性が高いんじゃないの?*1
もちろん、全員が全員、自分の思いついたことを深く検討せずに発言し出したら、場はとてもノイジーな状況にはなるし、そこから有用なアイディアを拾い上げるためのコストも相当かかる。100から5つを選び出すケースでは、S/N比は20分の1みたいなもんだからね。今のインターネットはまさにそういう(あるいはもっと劣悪な)状況なんだと思うけど、そこから有用なアイディアを拾い上げるコストがかさむからといって、発言を抑制させようとしたり、あるいはアイディアを拾い上げること自体を放棄してしまうのは、なんだかもったいないんじゃないかと思う。そこはもっと前向きに、発言を抑制させることなくいかにアイディアを拾い上げるコストを減らせるか、という方向を模索すべきで、その解法を見つけ出す・作り出すことこそイノベーションであり、夏野氏のような立場の人に求められている仕事なんじゃないかと。


納税云々に関しては、そもそも納税額の多寡≒所得の多寡は本人の努力はあるにしろ運不運によるところが大きいと思っているので、全く同意できません。今たくさん納税してる人は、ありがたいけど、そのことをもってその人が偉いとか、その人の発言権を強めるべきだとは全く思わない。仮にその人が生まれてこなかったとすると、別の人が今のその人のポジションに滑り込んで、ほぼ同額の税金を納めてたんじゃね?という。
だいたい、所得の多い人の発言権ばかり大きくしたら、貧乏人に必要な政策が実施されにくくなって、より一層、所得額の階層が固定化されるじゃん。富裕層が自分達を利するためのポジショントークとしてならありうるけど、それはそれで強欲過ぎかつ不公正だと思うし。


格差云々に関しては、そりゃー下を見ればもっと酷いとこだってあるでしょうけど、じゃあどうして我々がわざわざ酷いとこに合わせる必要があるのか、が疑問。現状追認のための言い訳にしかなってなくないですか。いま貧困にあえいでいる人達に、もっといい暮らしがさせられないかどうか、それを考えようとするのがそんなにいけないことなのかしら。もっと上を見ようよ上を。

*1:表現の自由が想定している自由な言論の場、というのも、そうやって誰もが(くだらない内容であろうと)発言できる状況だと思います。