マッチポンプ(確定)

昨日のエントリで紹介した記事の中で、特に気になっていた一節があります。それは以下の部分。

さらに協定は、「バーチャルな画像や性的搾取の表現」という文言で、子どもを性の対象として描いたマンガやアニメなども児童ポルノに含めると規定した。

日本語のバーチャルと、英語のvirtualって、意味が違うんだよね。
英英辞書とか英語版Wikipediaとか読めばわかるけど、virtualの本来的な意味は「限りなく本物に近いけど、本物ではない」というニュアンス。
それに対して日本語のバーチャルは、“専門家”だとか“ジャーナリスト”だとかの、本当はよくわかってらっしゃらない人たちが濫用した結果、「限りなく本物に近い」という意味が削られて、単に「本物ではない」という意味合いで流通してしまっている。
 

この違いの意味するところが何なのか、まだピンとこない人がいるかもしれませんが、もっと具体的に、「virtual pornography」という言葉と、「バーチャルなポルノ」という言葉を比較してみたらわかりやすいでしょうか。
前述した言葉の意味を踏まえれば、「virtual pornography」という言葉は「実写で作成されたものと見分けがつかないような、架空表現のポルノ」という意味になり、実写志向のCGや写実的な描法の絵などを指すことになります。
一方、「バーチャルなポルノ」と言われると、我々日本人としては、もっとアニメ調だったり漫画調だったりする表現も含めたものを(と言うより、それらを中心に)思い浮かべてしまいますし、実際そのような意味としてこの言葉が発せられているケースがほとんどです。
 

上の意味での「virtual pornography」については、アメリカでも「実在児童への直接の被害を及ぼしているとは言えない」という判断があって違法化されていませんが、規制推進派はこれに対しても「特定の児童への実害に限らない、児童を害する概念を表現すること自体が問題なのだ」というトンデモ論(そんなこと言い出したら犯罪行為についての架空表現全般がNGってことになるだろjk)を振りかざして規制を求めてきています。
上の意味での「バーチャルなポルノ」というのは「virtual pornography」よりも実在性・写実っぽさの面でさらに“遠い”表現なワケで、これを規制するかどうかについてもまた一段階ほど立場が変わり、これについてすら規制を求めているのが皆さんご存知の日本国内の規制推進派の面々になります。
 

そういう違いがあるので、上掲の記事の該当部分を最初に読んだとき、どっちの意味?というかどういう意味?で言ってるのかがさっぱりわからず混乱しました。で、原文(pdf)を読んでみたら、ひどいことに、この両者を混同させる内容の議論になってるんですね。
原文の途中で「実在の児童の写真をデジタルで巧く加工して、実写ではないポルノに仕立て上げた画像が多く流通している」という研究内容を引用し「そのような画像加工技術の発展が被害を大きくする懸念がある」という論を展開した直後に、「そういった画像の主要な発信源は、巨大なアニメ・漫画市場を持つ日本である」と続けていて、あたかも日本のアニメ・漫画文化が諸悪の根源であるかのような書きぶり。それ以降は本当にもう無茶苦茶で、いわゆる、嘘は言っていないが誤解を与える類のレトリックをふんだんに使い、日本の実情について知らない読者を誘導する気まんまんな内容になっています。
つまり原文においては、アニメや漫画なども(本来的な意味では「virtual pornography」とは呼び得ないにもかかわらず、その実態を誤認させることで)「virtual pornography」の概念に含まれるのだ、という誘導を他国の参加者に対し行なっているわけです。そして、上掲の記事に見るように、そのような文書をこの会議で採択させることで逆に日本に対し「アニメや漫画もダメだって決まったよ〜」という外圧として利用する、と。
ぶっちゃけ、自分達の望む規制を推進するために自分達に有利な主張ばかりを展開して他国の参加者達を欺き採択まで持っていった挙句、その採択結果をもって規制推進のための外圧に利用しようとしているわけで、あまりにも自己中心的かつ不誠実すぎる活動内容なのではないかと。これは、表現の自由を守りたい人たちだけでなく、児童を守るために真面目に活動している人たちからも、名指しで袋叩きにされるレベルの内容のように思います。
 

いや〜正直ここまでひどいとは思いませんでしたわ。