にゃん


ハルヒガムのCMに登場した件。ちょっと前に書いたことがそのまま実現してしまったようでいて、ちょっと焦った。


いや、言いたいことはわかるよ?自分もこのCMを最初見たとき「あれ?ちょっとビミョ〜・・・」と思ったりしたもんだ。でもその感覚はたぶん、アニメの文法でこのCMを受容してるから起こってるのであって、コンテレベルで評価すればそこいらのCMと同程度の質なのではないかと。別にアニオタだけに向けてCM作ってるわけじゃないので、この30秒の映像の背後には関係各社の営業さんたちの間での熾烈な駆け引きがあった上で、最終的にこのような形に落ち着いたと考えるべきでしょう。ただ、前例があまり無いこともあってか、ちょっとまだ最適化しきれてないかな、と思うところはあります。


アニメキャラをCMに起用することの商業的な効用を考えると、立場によって次のような思惑が働くでしょう。

  • そのキャラの権利者

・・・ そのキャラやそのキャラが出演している作品の認知度が世間一般に高められることを期待して、あるいはアニメというジャンルへの親近感が世間一般に高められることを期待して、そのキャラをCMに採用してもらいたい。ただし、そのことによってそのキャラの既存のファンからそっぽ向かれるようなことは避けたい。

  • そのキャラをCMに採用する側

・・・ そのキャラがCMに登場することで、そのキャラのファン層による商品の購買へと繋がることを期待して、そのキャラをCMに採用したい。ただし、そのことによってアニメに無関心な層への訴求力を落としたくない。


したがって、このようなCMに求められる作りとしては、そのキャラの元々のファンの期待を裏切らないような内容にしつつそれらのファンによる商品購買に繋がるようにする必要があり、加えてアニメに興味の無い層からは引かれないような工夫が必要、ということになるでしょう。平たく言えば、知ってる人はニヤリとする、知らない人にはわからないけれども引かれもしないような、そういう内容にするべきだということです。


その観点からすると、今回のCMは、ハルヒファンをニヤリとさせるような仕掛けは足りておらず、他方でネコ長門なんかは一般人が引いてしまうような要素になっており、アニメキャラ起用の効能をちょっと活かしきれてないかな、という気がします。


おそらく、この形式のCMを最も有効に打つとしたら、既に固定客が十分な数いる商品についてオタク層にもアピールすることを目的とし、オタク層にのみ通じる要素を盛り込みつつも既存の固定客が逃げないよう過剰な表現は避けて嫌味にならないようにする、というものが理想的でしょう。
例えばPEPSI NEXのCMで、例えばラブプラスの凛子が出てきて、「別にカロリーとか気にしてないけど。この味が好きだから飲んでんの。」「美味しいところがいい。PEPSI NEX」とか言うだけでも、かなり効果があるんじゃないかな〜と。で、実写タレント版のもいくつか平行して流せば、PEPSI NEXの数あるCMパターンのうちの1つという位置づけに収まって、一般人にも引かれにくくなる、みたいな。
ただ、現実的には、オタク層による購買の増加を主眼においた広告というのは(オタクは金になると気付かれつつある現状であっても)なかなか決裁を通らなさそうなので、とりあえず人気タレントも同時出演させちゃう今回のような灰色決着にならざるを得ない、ということもあるんでしょうね。


ま、こうやってアニメやゲームの文化を一般に普及させていこうとする試みは産業の将来的な意味でも大事なので、どんどんやって欲しいと思います。