定数じゃなく、中の人を変えろ


増税するなら議員定数削減すべきとか言ってる国会議員がいるようだけど、これ全くもって的外れどころか、害悪の大きい政治的アピールでしかないと思う。
議員ってのは国民の代表・代弁者として選出されているわけだけど、その定数が減るということは、大雑把に言って、議員1人あたりが代弁する国民の数が増えるということ。すなわち、各議員はより最大公約数的なand/orより多数派びいき的なポリシーに染まる傾向が強まって、国民の多様性に配慮したきめ細やかな施策が採られにくくなったりマイノリティの声が埋もれやすくなったりしてしまう。そのことで損をするのは最終的には国民でしょう。それなり以上の人件費を支払って今の定数を維持しているのは国民の多様性を国会に反映するためです。
もしその人件費に見合う働きをしていない議員が多い、と言うのであれば、怠けている議員を個別に名指しして批判すべきでしょう。具体的な事例を挙げるなら、小沢氏が民主党で支配的であった一時期に、党内で政策論議ができないとか何とかいうことがありましたが、そういう状況はかなり厳しく叩かれなければならなかった。そういう状況に甘んじていた民主党議員が、今になって、無駄な議員を減らすなどと言って議員定数削減を唱えるのはちゃんちゃらおかしい。その論理なら、当時の党内力学で抑圧されて政治的に有効に機能できなかった民主党議員達は無駄飯喰らいとしてまっさきに議員辞職すべきだったのではないかと。
そのうえでなお、もっとコストパフォーマンスの高い議員で国会を占めたいという要求があるのなら、やるべきは議員定数の削減ではなくて、選挙制度まわりの見直しでしょう。まず候補者届出の時点で、有能な政治家になりうる人材が不足しているからこそ、金とコネだけが取り得の政治屋さんや政党の威を借りただけの新人が当選してしまっているのでね。もっとそこらへんの普通のサラリーマンや自営業のオッサンなんかが、時流によって使命感を持ったら、何ら特別な後ろ盾が無くとも立候補して政治家になれるような道筋を作る必要がある。例えば、裁判員制度において各企業に雇用者の特別休暇を認めるよう求められるのと同様に選挙に候補者として届け出た者にも選挙期間まるまる特別休暇として認めるような風潮を醸成する(あるいは労働基準法などを改正して制度化する)、とか、インターネット選挙を解禁して選挙活動費用が少なくても有効な活動が行なえるようにする、とか、中途採用・雇用の流動性を促進して任期終了後に復職しやすい社会にする、とか、そのためにやるべきことはいっぱいあります。
そういう本質的な問題点・改善策に言及することなく、ただただ議員定数を減らすのがコストカットでありコストパフォーマンス改善だーみたいに喧伝するのは、本当に粗雑で中身の無いアピールでしかない。まずこういうアピールをするような議員さんたちから率先して辞めてもらうのが一番いいかも。