楽しみ方を上達させんと


初心者が将棋を学ぶにあたり駒落ちでの真剣勝負は不適切なのではないかという件。
何度も繰り返される話題としてなぜ格ゲーは初心者お断りなのか的なのがあるけど、熟練者は試合結果が負けであってもその試合の過程(1つ1つの局面や駆け引き、複雑に絡み合った状況に取り組むこと自体)に面白みを見出すことができる一方、初心者には勝ち負けしか見えてなくて、そしてプレイヤースキルが勝敗に反映される比重の高いゲームほど初心者は勝てないから、結局つまらなくなってやめてしまう。だから、そのゲームにおける過程の面白さをある程度わかった上でからでないと、いくらハンデをつけるとはいえ試合形式で練習するのは初心者にとって効果的でない気がするんだよね。そこのところの問題意識があるためか、格闘ゲームなんかでもコンシューマで出されるときは、本当に本当の初心者向けのチュートリアルを充実させたりするってのが実際にあるし。
その点、将棋の場合、座学は「駒の動き方さえ把握できてればいいだろ」みたいに切り上げられちゃうのかもしれないけど、実際に将棋で重要なのは、いま自分が駒を動かそうとしている場所に相手の駒・自分の駒がそれぞれどれだけ効いていて、いま自分が動かそうとしている駒は動かす前・動かした後それぞれどこに効いているのか、ということを見極めること、そしてそれを数手先までシミュレーションして問題ない手かどうかを吟味すること、だよね。せっかくパソコン使って指すなら、そういった駒の効きを自動で表示してくれたりする機能を用意して、かつ様々なケーススタディを自学自習できるチュートリアルがあれば、初心者の練習にはちょうどいいんじゃないかな。それによって将棋の指し方のようなものがある程度見えてくれば、1つ1つの局面や駆け引きそのものに面白みを見出せるようになって、試合形式に移行した後も、負けたとしても将棋に対するモチベーションは失われにくいんじゃないかと。


関連して、面白いな、と思ったのは、ブシロードが自社のTCGを開発するにあたって「初心者は勝てないと面白くない、熟練者相手に負け続けるとそれだけでやめてしまう」という観点から、そもそもゲームシステムとして初心者が熟練者にも勝てるように(いわゆるまぐれ勝ちが起きやすいように)意図的にゲームデザインした、という話。TCG廃人からはスタイリッシュ坊主めくりなどと揶揄されがちなシステムですが、実際に売り上げは伸びてるようですし、直近の木谷社長のツイートでもそのことが好評価につながっている旨が述べられています。
このケースの場合「初心者には勝ち負けしかわからない」事実に対して抵抗するのではなく、「ならば勝利というニンジンをぶらさげれば初心者はついてくるんじゃん」という考え方で解決を図っているのが興味深い。「たまに勝てる」というゲームシステムにつられて初心者がプレイし続けてくれさえすれば、いずれ自ずと熟練者になるだろう、という。大学生が麻雀にハマるメカニズムなんかにも同様の要素がありそうですね。
まあ将棋の場合にはゲームシステムをいじるわけにはいかないから、この手は難しいかもしれませんが。


なんにしても、初心者に続けてもらうためには、上達過程をなるべく苦行だと感じさせないような工夫が要るんじゃないか、と思います。