サムゲタン炎マ成功?


さくら荘のペットな彼女についてアニメにおける原作改変で荒れてるらしい。まあこれにかこつけてヘイトスピーチ垂れ流してるような連中は差別主義者扱いでいいけど、今回の改変内容に対する批判の多くは正当なものだと思うよ。


今回の改変内容が問題視される一番の要因は、視聴者にとってあまり馴染みの無い料理を当然のように登場させたことでしょう。「行間を読むためには、まず行が読めなければならない」わけで、「サムゲタンを登場させた演出意図を理解するには、まずサムゲタンについての理解がなければならない」わけです。このアニメを見るまでサムゲタンを知らなかった視聴者にとっては、サムゲタンなる料理の具体像を知らないまま、それが作中において与えられた役割・意味を読解しなければならず、無用にハードルを上げることになってしまっています。
具体的に言えば、例えば「サムゲタンは鍋じゃないっすよ」というセリフについて、サムゲタンを知らない視聴者はそのセリフの指摘内容の当否を判断できないし、その判断ができないからそのセリフをあえて言わせた作劇上の理由が推測できない。製法も知らないから、手間がかかるものなのかどうか判断できず、その判断ができないからキャラのかけた労力が想像できない。匂いも味も知らないから、病人にとって食べやすい料理なのかどうか判断できず、その判断ができないからキャラの気配りが見えない。*1
その意味では、この改変が何らかの演出意図を伴ったものであったとしても、(伝わらないんだから)この演出は失敗だったと言えるでしょう。あえて原作から内容を変えたのに、視聴者にとって余計にわかりにくくなるという結果を招いてしまったと。


ぶっちゃけ、ニュー速VIPブログ管理人の意見が、この件で騒いでいる視聴者の反応として非常にわかりやすいのではないでしょうか。


加えて言えば、別に韓国料理じゃなくとも、馴染みの無い料理であれば同じように「余計にわかんねーよ」って言われてたでしょうね。チャオガーとかブブルマナドとかカオトムとかアロスカルドとかでも。
馴染みの有り無しを問うとすれば、東京暮らしなら、韓国料理に限らず、いろんな国の料理に接する機会に恵まれていて(あるいはその様子をテレビを通じて見ていたりして)例えば前述の料理を知ってる人や好物にしてる人も少なからずいるでしょう。でも「知ってる人や愛好してる人が一定程度いる」ことと「ほとんどの人の間に定着してる」ことは違うから。そこのところを無視して「馴染み無いって言ってるヲタが世間を知らないだけだろ」とか言っちゃうのは、「作品を理解できない受け手が悪い」という論法の亜種に過ぎず、少なくともエンターテインメント作品についてはかなりダメなタイプの擁護(むしろ贔屓の引き倒し?)だと思います。


かように、表現内容の巧拙(なぜ原作を改変してまでわかりにくくした)が問題の中心なので、表現の自由を持ち出すのも完全に的外れ。てか、めちゃくちゃ雑だなぁw


まあ、ここまで騒動が大きくなってるのは、韓国に対する嫌悪感情が背景にあるのも理由として考えられ、実際にそのような感情を述べている人もいるけど、見るかぎり民族主義的な対立感情というよりも、今までの韓国文化の宣伝のされ方(いわゆるゴリ押し?)に対する反感が積もり積もったものの発露のように見えるから、十把一絡げに「韓国嫌いは差別感情だ」と断言してしまうのもレッテル貼りに過ぎないでしょう。たぶん、もっと自然な形で韓国文化が紹介されるのであれば、ここまでの騒動にはならなかったのではないかと。


なんにせよ、この一件でサムゲタン知名度は間違いなく上がったでしょうから、この改変を企図した人の目論見は達せられたのではないでしょうか。まあ必ずしもいい意味で知名度が上がったとは言えませんがねwもし本件のせいで日本国内のBD売上げが落ちるようなことがあっても、韓国でも放送してるぶん何かしらその損失を補填できる算段もあるのでしょうし。

*1:サムゲタンを知るらしい人からも、「確かに滋養食だけど、病人に食わせるには重すぎで不自然」「もっと他の韓国粥でよかっただろ」という指摘も出てるようですが、そういった意見の当否については私は判断できません。